人気ブログランキング | 話題のタグを見る

12/16の授業へのコメントから

N. O.: イメージの脱却、それは思いのほか難しいものだと思う…相手の我々に対するイメージを変えるためにはまず相手と我々の立ち位置を変えなくてはならない。そのためにはまず我々が相手のイメージを理解することが大切だと思う。

A. T.: 今までアジア系男性のクールなイメージはカンフーやマンガを通してしかアジア系以外の人には伝わりにくいというのは確かにそうだと思ったけど、実際私(たち)がたとえばアフリカ系男性やヨーロッパ系男性に持つイメージというのもひどく限定的でしか知り得なくて、お互いの理解というのは難しいなと今更ながら思いました。Stereotypeはぬぐい去れないものでしょうか。そうだとしても、stereotypeに縛られない状況というものは作れないのでしょうか。

大脇:私がこの授業でみんなに伝えようとしていることは、まさにその「ステレオタイプに縛られない状況をつくりだす」にはどうすればよいかを考えていこう、ということだと思います。こういったステレオタイプがどのようにして生まれたのか、そしてそれが社会・経済・文化のそれぞれのレベルでどのように機能し、どのような影響を人々に与えてきたのか…などを学ぶことが、こういったステレオタイプに縛られない物の見方や思考の枠組みを個人個人に与えてくれ、そうした見方をする人が増えることによって、そしてまたその人たちがメディアや社会経済や国際関係のあり方を変えていこうと自覚的になることによって、そうした状況を生み出すことができるのではないでしょうか?

R. F.: アジア人女性について…Kill Billを思い出した。One character was a Japanese high school student, who was actually a killer-machine working for the Yakuza clan. 私がそのキャラを面白いと思った理由は、日本人女子高校生という新しいステレオタイプと、それと全く違っているイメージを連想させるやくざのステレオタイプが混合されたキャラであったということ。

大脇:日本人の女子高校生というのは確かに現在新しい日本人女性(若いJapanese girls)の新しいイメージとして世界中に広まりつつありますね。私が外国に住んでいたときには、「ほんとに顔を黒くして白い唇と白いアイシャドーの子たちが町を歩いているの?!」などと尋ねられたことがけっこうありましたが、日本のマンガやアニメのキャラが世界中に広まっている事実とも相まって、こうした女子高校生像が新たな日本女性のステレオタイプとして加わりつつあるのかもしれません。やくざのステレオタイプとの混合は確かに奇異な感じもするけど、でも援助交際という現象もあったし(今でもあるのかな)、実はやくざと女子高校生って遠そうで近いイメージもあるのかもしれないですね。まあKill Billの場合は、監督のクェンティン・タランティーノが自分の偏愛する(それこそ昨日の授業でちらっと説明した「フェティッシュ」として偏愛している)日本映画やマンガ、そのなかのヤクザやサムライや女子高生などのキャラ、それらすべてをごった煮にした映画なので、そうした「新キャラ」がスクリーン上に登場するのもまったく不思議ではないのですが。

A. F.: メールオーダーブライド?! 
なんか21世紀と思えない制度です。女性も納得してやってるから人権侵害にはならないのかもしれないけど、今の私と同じ生活水準にある女性のうちどれだけの人がそういった形の結婚を望むかを考えれば、生活水準の違いによって女性が決して望まないであろう結婚は、女性が本当には望んでいない結婚だと思います。早くなくなってほしいです。

大脇:まずひとつ確認。コメントには「メールオーダーブランド」と書いていましたが、「ブランド」ではなく、「ブライド」です(花嫁=bride=ブライド)。ただの書き間違いかもしれませんが、念のため。
メール・オーダー・ブライド(mail order bride:花嫁の通信販売)の問題は実は非常に大きな問題で、私は昨日の授業の後のみんなのコメントでも、このトピックに関するものがもう少しあるのではと思っていたのですが、結果としてはこの一枚のみでした。で、このようなコメントがあったことはとてもうれしかったのですが、いくつか、私の説明が至らなかったところがあったようなので、誤解していると思われるところを正しつつ、補足説明します。
 まず「21世紀と思えない制度です」とあるのですが、これは「制度」ではなく「ビジネス」です。これを国が支援して「制度」としてやっていたら、それこそ言語道断でしょう。そしてビジネスといっても違法すれすれで、インターネット上で展開されているビジネスであるために検挙がされにくく、法律でなかなか取り締まれないという現況を利用して、こうしたブローカー業者が暗躍しているというのが実状です。
 そして次に、「女性も納得してやってるから人権侵害にはならないのかも」とあるのですが、実はここに大きな問題と議論の争点があるのです。確かに、こうしたメール・オーダー・ブライドのサイトに自分の顔写真や名前を登録している女性たちは、「自分の意志で」あるいは「納得して」やっていると思われがちだし、実際それを言い訳にして、こうした業者や花嫁を買う(主に第一世界の住人の白人)男性がたくさんいるわけですが、でもここで一歩引いて考えてみてください。こうしたサイトに登録している女性たちの大部分は、たいてい第三世界の貧困層の女性たちです。今日明日の暮らしをようやくしのぐような生活に汲々としている家庭や地域に育った彼女たちは、自分の家族や国を離れてでも、まったく見知らぬ人に嫁いででも、何とか現金を手にしたい、あるいはアメリカ行きの切符を手に入れたい、との絶望的な願いから、こうしたサイトに登録しているというのが現実です。そしてこうしたサイトの運営をしているブローカー業者たちは、こうした彼女たちの絶望的状況を利用して、甘言で彼女らを巧みに誘い、サイトに登録させているのです。その後、彼女たちがどんな人に買われようが、どんな暮らしをすることになろうが、彼らはもちろん意にも介しません。彼女たちを「買う」人物が、常に「いい人」であると限るわけではないのは無論のこと、彼女たちをたとえば売春婦として使ったり、ポルノ映画に出させたりなど、商売目的の人もいないとは限りません。そうしたときに一番問題となるのは、ほとんどの場合、mail order brideとして異国へ来た彼女らには、「こんなはずではなかった」という状況になったとしても、後戻りができないということです。彼女らには自分の国に戻る費用も、法的な手段も何もないことがほとんどだからです。

 というわけで、彼女たちも合意の元でやっているのなら人権侵害ではないかもしれないといったんは考えたものの、自分と同じ生活水準にある女性ならそんな結婚を望むとは思えない。だからやはり問題なのではないかと考えたAさんの直感は正しかったわけです。こういう想像力や感受性をもつこと、そしてそうした自分の関心を引いた問題について調べようとする探究心や行動力をもつことがとても大事だと思います。

by mowaki93smile | 2005-12-19 06:43 | 比較文化・授業へのコメント  

<< 1/13の授業の予習について(... 英語で話すワークショップ >>