1/13の授業へのコメントから

N.T.: とんでもなくお下劣でパワフルなので度肝を抜かれた。パワフルな笑いというのはよけいな気を遣わず楽しく見ることができる。実は僕は笑いというのは社会的ないし政治的な運動においてけっこう重要な役割を担いうると思っている。歴史上の学者や思想家は「より良い社会」の設計と構想に膨大な時間を費やしてきたが、その内容は生真面目で堅苦しいものがほとんどであった。しかしより良い社会とはより楽しい社会であって、彼女?のように心底から愉快さのエネルギーを発散することが誰にとってもたやすい社会のことだと僕は思う。雄々しく、力強い、アクは強いが効き目も抜群のエンターテイメントだと思った。

大脇:「笑い」が実は非常に政治的に重要な役割を担いうるというのは真実で、この点を指摘してくれたN.T.君は相変わらずの慧眼です。来週はこの点をきちんと授業で取り上げ、解説したいと思っています。
実は私が一昨年に書いた論文で、M. Choを取り上げ、彼女の「笑い」とその政治性について論じたものがあるので、興味のある人は読んでみてください。
論文集『表現の〈リミット〉』(斉藤純一編著、ナカニシヤ出版、2005年)に所収されています。この本は、横国大の総合図書館に置いてあります。

W. I. : どちらかというと、差別を助長しがちなコメディーの世界で、それを逆手に取って活躍している姿は「美しい」と思う。

A. F. : 彼女はすごく面白くて、なんか美しく見えた。彼女がみんなに心から受け入れられている社会って生きやすいと思う。アメリカのなかにはそんな社会が出来てきてるんだな。もっとそれがアメリカ全体、世界全体に広がれば良いと思う。ストレート以外の人が生き生きする社会が良い。

大脇:偶然、二人の人が同じ「美しい」という言葉で彼女を(あるいは彼女の生き方や仕事を)形容していたことが目に留まりました。また、W.I.くんの指摘、「どちらかというと差別を助長しがちなコメディーの世界」というのは非常に重要な指摘で、「笑いものにする」対象を常に必要とするコメディーの世界は、伝統的に、白人が黒人やアジア人を笑いの対象にしたり、男性が女性を笑いの対象にしたり、異性愛者が同性愛者を笑い者にしたりするなど、人種差別や性差別が蔓延している世界でした。しかもずっと長い間、米国のスタンドアップ・コメディアンというのは、白人で異性愛者の男性がほとんどという世界でした。そういうなかで、M. Choのような人種的にも性別でも性指向でもマイノリティの人物が、この世界のなかで徐々に自分の実力を認めさせていき、これほどの人気を勝ち取ったというのは、実はかなり画期的なことなのです。

K. M. : 映画に出てくるような、美男美女の恋愛映画は、ゲイ、レズビアンまたは僕らのような普通の人から見ると、確かに等身大の物語ではないのかもしれない。実際は、Mr.クリーンやMissクリーンのような人々はいないのだということを、この女性コメディアンは教えてくれているような気がする。

R.T. : Margaret Choは、自身の容姿の悪さ、アル中、失恋、ダイエットの失敗・・・といった、負のイメージを笑いのネタにしつつも、決して自虐になりすぎることなく、多くの聴衆に受け入れられていると感じた。(ただし、英語自体はあまり聴き取れなかったが。)
さらに、同じ韓国系コミュニティの内部から批判されているにせよ、世の中のセクシュアル・マイノリティをコミカルにしゃべりながら、それを中傷におとしいれず、そういった人々から支持されるところは、大きな才能と言えよう。

S. Y. : 「彼女は韓国人らしくない」と言われたそうだが、「〜らしさ」とはいったい何か? 「〜らしさ」という言葉は消極的だ。あらかじめ作られた枠のなかに、その対象を全て閉じ込め、はみ出した人を「〜らしくない」と非難するのはどうかと。

大脇: 「〜らしさ」とはいったい何か、これは非常に重要な問いです。M. Choの舞台や生き方は、まさにそうした根本的な問いを、社会に対し、そして私たち全てに対して問いかけるものだと私も思います。

他にも興味深いコメント、鋭いコメントが多数ありましたが、とりあえず最も核心を突いているものを載せました。パソコンや機械の設定不備で時間を大幅にロスし、授業終了時間まぎわにコメント用紙を配ったにもかかわらず、大勢の人がきちんとコメントを書いてくれていて、本当に感謝感激です。どうもありがとう。新年早々の失敗でしたが、残りわずか2回(補講日を入れると3回)はこんな失態のないように、重々心がけたいと思います。
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by mowaki93smile | 2006-01-15 18:22 | 比較文化・授業へのコメント  

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